除菌治療を終えて数か月がたった。その間も仕事で忙しい日々を送り、時には家族でキャンプに行ったり普段の日常が続いた。ただ心の奥底にはいつも病気のことが頭にあった。11月下旬、再び胃カメラ検査を受ける日がやってきた。何度経験しても検査前の緊張は消えないが、このときは特に「どうか良い結果であってほしい」と強く願っていた。さらに日を開けてCTも撮影した。
日を開けてCTも撮影し、月も12月の中旬結果が出た。結果を聞いたときの言葉は今でも忘れられない。──「MALTリンパ腫は消失しています」。
医師は「除菌治療での消失はピロリ菌感染者ではないので確率的にはそこまで高くない」と言われていたので、それだけに喜びは大きかった。胸を締めつけていた不安が一気に消し飛び、心の底から安堵した瞬間だった。半年間頑張ってよかった。
今後は、タケキャブで胃酸の分泌を抑えながら(若干の逆流性胃腸炎の様子があるため)、年に1回の胃カメラで経過を確認していくことになった。大病を経験したことは確かに重い事実だが、これからは「定期的に確認できる」という安心感のほうが勝つようになった。
そうしているうちに年は明け2020年、世の中はコロナ禍に突入した。病院通いが難しくなるかと心配もしたが、定期的な問診と検査を続けることができた。繰り返すうちに胃カメラにも慣れ、病院との付き合いが「恐怖」ではなく「日常」になっていった。これからも一生続いていく付き合いなのだろう──そう思えるようになったのも、心の大きな変化だった。
そして年月は過ぎ、2024年の春。診察の終わりに、担当の医師から「この春で病院を離れることになりました」と知らされた。信頼していた先生だったので、とても残念で寂しい気持ちになった。だが、引っ越しもして生活圏が変わっていたこともあり、これを機に新しい病院を紹介してもらうことになった。 紹介されたのは、5年前、人生で初めて胃カメラを受けたあのクリニックだった。再び足を運んだとき、懐かしさとともに「またここから始まるのか」という不思議な感慨があった。
そして念のために受けることになった、5年ぶりの胃カメラ。
あのときと同じように、検査前の緊張がじわりと胸に広がっていった。
──まさか、この検査が新しい現実の始まりになるとは、まだ知る由もなかった。
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