再び、山へ 第3章 再発、そして決断

 5年ぶりに戻ったクリニックで受けた胃カメラ。その診断結果を聞いたとき、耳を疑った。──「MALTリンパ腫、陽性です」。

 ここ数年、安心して暮らしてきた時間はいったい何だったのだろう。あれほど安堵していたのは、ただの夢だったのか。消失したはずの病気が再発したのか、それとも最初から消え切っていなかったのか──その答えを知る術はもうない。ただ、胸に広がるのは虚無感と深い落胆だった。

 信頼していた前の主治医もすでに退職しており、どうにもならない気持ちになった。確かに良い先生ではあったが、今思い返せば、年を重ねるごとに診察は所見確認だけになり、組織を取っての検査は次第になくなっていた。あのとき、もっと突っ込んで確認してもらうべきだったのだろうか。心のどこかに、そんな後悔が残った。そしてこの経験から、セカンドオピニオンの必要性を強く感じた。

 再び以前の病院に戻ることも叶わず、紹介されたのはさらに家に近い大病院だった。気持ちを立て直す間もなく、また一から問診や胃カメラの検査が続く。振り出しに戻されたような感覚に、胸の中にはどうしようもないループ感と虚しさが広がっていった。

 新しい病院での方針は、まずはもう一度、別の薬での除菌を試みるというものだった。希望をつなぐように薬を飲み切り、再び胃カメラ検査を受けた。しかし結果は変わらず、MALTリンパ腫は陽性。──万策尽きた。残された選択肢はただひとつ、放射線治療しかなかった。

 医師は「進行は遅い」と説明してくれた。確かに今すぐ命に関わるものではないのかもしれない。それでも、このまま病気の存在を気にし続けながら生きていくのは耐え難いことだった。どうするべきか、悩みに悩んだ。

 そして最後には、自分にこう言い聞かせた。「今しかない」と。仕事のスケジュール的にも区切りをつけやすい時期だった。覚悟を決め、放射線治療を受けることを決断した。

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